犬のリードの先に付いたナスカンと、安全に使うための解説

犬のリードの先についている、小さな金具。

普段あまり気にすることはないかもしれませんが、この「ナスカン」は、愛犬と飼い主さんをつないでいるとても大切な部品です。

犬の首輪屋てるべるでは、首輪やリードを作り始めて以来、この小さな金具をずっと重要なものとして考えてきました。

そのきっかけには、私自身の苦い経験があります。

昔飼っていた柴犬が、何度も脱走しました

まだ私が犬の首輪やリードを作る仕事を始める前のことです。

実家では柴犬を飼っていました。

当時は今と違い、犬を外で飼う家庭も多かった時代です。

その柴犬が、何度か脱走したことがありました。

時にはまったく見つからず、一日中家族で探し回ったこともあります。

幸い、毎回無事に帰ってくることができました。

そのとき父は、

「ナスカンをつけたつもりだったけど、つけ忘れたのかな……」

と、自分を責めていました。

ところが、その後私自身が首輪やリードを作る仕事を始め、さまざまなナスカンを扱うようになって気づいたことがあります。

もしかすると、父がナスカンをつけ忘れていたのではなく、当時使っていたナスカンが外れていたのではないか。

そう思うようになりました。

リードを作り始めて、一番苦労したのがナスカン選び

私が首輪とリードを作り始めたころ、とても苦労した部品のひとつがナスカンでした。

リード本体をどれだけ丈夫に作っても、首輪をどれだけしっかり作っても、その間をつないでいるナスカンに問題があれば意味がありません。

愛犬と飼い主さんをつなぐ、大切な一つの金具。

そう考えると、簡単には選べませんでした。

そこでたくさんのナスカンを仕入れ、実際に触り、開閉し、強度や使いやすさ、外れにくさなどを確認しながら選んできました。

ナスカンの中には、もともとバッグや服飾品など幅広い用途を想定して作られているものもあります。

見た目が似ていても、バネの強さや材質、構造などには違いがあります。

だからこそ犬のリードに使う場合は、「形がナスカンなら何でもいい」とは考えていません。

一般的な「鉄砲ナスカン」

昔からリードによく使われているのが「鉄砲ナスカン」です。

本体の中にバネが入っていて、レバーを下げることで先端が開き、手を離すとバネの力で元に戻る構造になっています。

とても使いやすく、現在でも広く使われているナスカンです。

ただし、私が昔さまざまな製品を試した中には、バネの力が弱いものもありました。

バネが弱いと、犬がブルブルと体を振ったときなどにレバーが動き、条件によっては思わぬ外れにつながることがあります。

そのため以前のてるべるでは、鉄砲ナスカンではなく「レバーナスカン」を主に使用していました。

以前採用していた「レバーナスカン」

レバーナスカンは、分かりやすく表現すると、洗濯ばさみのようにレバーを握って開閉するタイプです。

私が使ってきたものでは、バネの弱い鉄砲ナスカンと比べると不意に開きにくく、比較的軽量というメリットもありました。

そのため、長い間てるべるのリードではレバーナスカンを中心に採用してきました。

一方で、鉄砲ナスカンに比べて強度面で不利な製品があったり、長く使用することで開閉が悪くなったりすることもあります。

ナスカンには、それぞれ長所と短所があります。

現在は「強バネタイプの鉄砲ナスカン」を標準採用

その後、犬用としてバネを強くした鉄砲ナスカンを作っていただけるようになりました。

従来気になっていた「バネの弱さ」が改善されたことで、現在てるべるでは強バネタイプの鉄砲ナスカンを標準仕様として採用しています。

犬のリードに使うレバーナスカン・鉄砲ナスカン・強バネタイプの比較

ただ、長年レバーナスカンを使っていただいているお客様などから、

「今までと同じレバーナスカンがいい」

とご希望をいただくこともあります。

その場合には、商品によってレバーナスカンで対応させていただいています。

私たち自身も「これが永遠に正解」と考えているわけではありません。

より使いやすく、より安心できる金具があれば、常に試しながら見直しています。

「ロック付きなら絶対安全」とも限りません

ロック付きナスカンの例と、犬具に使う際の注意点

ナスカンの中には、簡単に開かないようロック機構が付いたものもあります。

私も初めて見たとき、

「これは犬用に使えたら、より安心なのではないか」

と思いました。

そこで仕入れ先に確認したことがあります。

しかし、その製品については「犬用として安全性を保証しているものではないので、犬具への使用はおすすめできない」という回答でした。

ロックが付いているから安全。

見た目が頑丈だから安全。

必ずしもそう単純ではありません。

犬具に使う以上、構造だけではなく品質や強度、使用状況まで考えて選ぶ必要があると、改めて感じた出来事でした。

ナスカンは「絶対に外れない金具」ではありません

犬のリードのナスカンは摩耗や動作不良などに注意が必要

長年犬具を作ってきて、私が飼い主さんに知っておいていただきたいことがあります。

それは、

どんなナスカンでも、絶対に外れない、絶対に壊れないとは言い切れない

ということです。

金属部品ですから、長期間の使用による摩耗や変形、砂や汚れによる動作不良などが起きる可能性があります。

だからこそ、ときどきナスカンを手で開閉し、

「バネはしっかり戻るか」

「回転カン部分は摩耗していないか」

「開閉が悪くなっていないか」

などを確認していただくことも大切です。

もしものための「ナスカン二重フック」

てるべるでは、万が一に備える方法のひとつとして「ナスカン二重フック」という考え方の商品も作っています。

これは、メインのナスカンとは別にもう一つナスカンをつなぎ、万が一メイン側が外れたり破損したりしたときにも、もう一つが一時的につながっているようにするものです。

「絶対に外れない金具を作る」というよりも、

もし一つに何かあったとき、もう一つで助けられないか。

そんな考えから作った商品です。

首輪とハーネスをつなぐ「ダブルリード」という方法も

もうひとつの安全対策として、首輪とハーネスの両方にリードをつなぐ「ダブルリード」という方法があります。

普段はハーネス側をメインに使い、首輪側は万が一のための補助としてつないでおく方法です。

特に怖がりなワンちゃんや、後ずさりをする子、保護犬などでは、首輪とハーネスの両方を使うことで脱走リスクを減らす考え方があります。

犬のリードのナスカンに力が加わり、外れる可能性を示した図

犬具だけに頼らず、飼い主さん自身でできる安全対策を

最近では、

「ナスカンも絶対ではない」

ということを知り、ご自身で二重の安全対策をされる飼い主さんも増えてきました。

もちろん、私たち作り手は、少しでも安全で使いやすい犬具をお届けするために、これからも金具を選び、試し、改善を続けていきます。

ただ、どれだけ犬具を工夫しても、100%を保証できるものではありません。

お散歩前にナスカンがしっかり閉まっているか確認する。

古くなった金具に異常がないか確認する。

怖がりな子なら、首輪とハーネスを併用する。

そんな小さな確認や備えが、愛犬を守ることにつながります。

愛犬と飼い主さんをつないでいる、小さな一つの金具。

普段は目立たない存在ですが、ナスカンはとても大切な犬具の一部です。

犬具だけに頼りきるのではなく、飼い主さん自身でもできる安全対策を取り入れながら、愛犬とのお散歩をより楽しく、安全なものにしていただければと思います。

犬の首輪屋てるべる
店長 照井